【第十七話】普通に見えるのに何かがおかしい。「イヌ」と言えなかったリハビリの日
2度目の退院。昔のことは覚えているのに、物の名前が出てこない。一見「普通」に見える夫との生活に戸惑う日々。そして退院後5日目、リハビリのテストで簡単な言葉が出ず、夫自身が「俺、おかしいな」と残酷な現実に気づき始めた日の記録。
夫のくも膜下出血と高次脳機能障害。突然変わってしまった生活の中で見つけた、小さな希望と共に生きる介護の記録です。
2度目の退院。昔のことは覚えているのに、物の名前が出てこない。一見「普通」に見える夫との生活に戸惑う日々。そして退院後5日目、リハビリのテストで簡単な言葉が出ず、夫自身が「俺、おかしいな」と残酷な現実に気づき始めた日の記録。
鳴りやまない暴言の電話に限界を迎えていた私を救ってくれた、看護師さんの温かい言葉。そして退院の日、ついに医師から告げられた「高次脳機能障害」。荷物を投げつける夫を乗せ、恐怖と不安に押しつぶされながら車を運転した、2度目の退院の記録。
「俺が一番偉い」「タバコ持ってこい」。注射器の処置で4度目の手術は回避できたものの、病室からはろれつの回らない暴言の電話が鳴り続ける。別人のようになっていく夫を見つめ、やり場のない思いを書き留めた苦悩の記録。
てんかん発作での再入院。電話にも出ず、悪化していく夫の意識に不安を募らせる中、医師から告げられたのは「頭蓋骨の外側の腫れが内側に入り込み、脳を圧迫している」という衝撃の事実でした。自然吸収か、4度目の手術か。見えない不安の中で「絶対に大丈夫」と祈り続けた日々の記録。
3度目の手術後、一時外泊で家に帰った夜。突然階段に向かって歩き出した夫が唸り声をあげ、全身の痙攣と大量出血を起こしました。救急搬送と「てんかん発作」という新たな診断。そして、ここから夫の様子が決定的におかしくなっていく、悪夢のような夜の記録。
面会が一切禁止されていたコロナ禍の2021年。人工骨を入れる3度目の手術から4日目の朝、夫から「血だらけやねん」「ここがどこか分からない」とパニックの電話が。密室の病室で何が起きたのか。そして急遽決まった「外泊」がもたらした、とんでもない事態の始まりの記録。
驚異的な回復で職場復帰を果たしたのも束の間。退院から3ヶ月後、感染症(皮下膿瘍)により再び開頭し、頭蓋骨を外すことに。頭蓋骨がないまま過ごした緊張の8ヶ月間と、人工骨を入れる3回目の手術。しかし、ようやく終わると思ったその入院中に、決定的な「違和感」が待ち受けていました。
手術から11日目、無事に頭のドレーンが外れ安堵したのも束の間。激しい頭痛に苛立つ夫から出た「死んだ方がマシや」の言葉に、看病で張り詰めていた私の糸が切れ、病室で衝突してしまった日のこと。そして入院からわずか16日での、早すぎた一度目の退院の記録。
リハビリが進み、少しずつできることが増えていった一般病棟での日々。2020年2月、子どもたちと3人でテレビを見る夫の後ろ姿に「日常が戻る」と安堵した日のこと。退院を目前に控えた、束の間の穏やかな時間の記録です。
ICUを出てホッとしたのも束の間、一般病棟で待っていたのは「水頭症の不安」「両手拘束」「激しい頭痛」という3つの壁でした。管を気にしながら痛みに耐え、それでも少しずつリハビリを進めてドレーンが外れるまでの日々の記録。