【第二十七話】「夫の人生は夫のもの」お酒を止められない葛藤と、ペットカメラ越しの日常

5回目までのてんかん発作は、
『薬の飲み忘れ』が原因ではないかと考えられていました。

だからこそ、自宅では服薬管理を徹底していました。
お薬カレンダーを使い、朝晩は忘れないようにタイマーをセットする。
夫自身も、薬だけはしっかりと気をつけていました。

**もう同じことを繰り返したくない**
そんな思いは、本人にも確かにあったと思います。

それなのに。
『6回目』の発作は起きてしまいました。
しかも、お酒を飲み過ぎた翌日でした。

私は思いました。
**やっぱり、お酒が原因なんじゃないか**と。

主治医に相談しました。
でも、先生の考えは違いました。

「お酒が直接の原因とは、言い切れないと思います」
そう言われました。
そして、
「タバコもお酒も、無理にやめさせることが、逆に大きなストレスになってしまう場合がありますから」とも。

もちろん健康面を考えれば、タバコはやめた方がいい。
そういう理由で、禁煙外来を勧められました。

病院には禁煙外来もあり、消化器内科もありました。
せっかくなので、両方受診することにしました。

禁煙治療。
結果から言うと、失敗でした。続きませんでした。

消化器内科では、肝臓の検査も受けました。
そこで言われたのは、「このまま飲み続ければ、肝硬変になる可能性が高い」ということ。
もしどうしても飲み続けたいなら、せめて量は控えた方がいい。そう説明を受けました。

てんかん発作の誘因(引き金)は、一つではありません。

・抗てんかん薬の飲み忘れ
・睡眠不足
・身体的な疲労
・精神的なストレス
・低血糖
・光刺激
・薬の影響

これら様々な要因が、複雑に重なって起こることもあります。
だから、「これだけが原因です」と断定できるものではありませんでした。

当時の主治医は、若い先生でした。
穏やかな先生で、どちらかというと患者さんを厳しく指導したり、刺激したりしないタイプ。
診察中も、世間話のような会話が多かった印象です。

正直に言うと、私は先生に『期待』していました。

私が何度言っても聞かないなら、白衣を着た先生から、
「お酒をやめなさい」
「タバコをやめなさい」
と、厳しく、強く言ってほしい。

私には、そんな他力本願な気持ちがありました。

でも、夫には夫の考えがありました。
**お酒は、人生の楽しみの一つ**
それもまた、紛れもない事実でした。

そう考えると、私はこれ以上、強く言えなくなるのです。

夫の人生は、夫のもの。
私の人生は、私のもの。

家族だからといって、相手の人生を完全に支配し、コントロールすることはできません。
でも、何かあれば一番に駆けずり回り、悲しむのも家族です。

その『寄り添う距離感』が、本当に、とても難しかった。

いつ、また発作が起きるか分からない。
その不安は決して消えませんでした。

仕事中も。買い物中も。外出先でも。
いつも心のどこかに、黒い不安がへばりついていました。

我が家には、猫がいます。
留守中の様子を見るため、リビングに『ペットカメラ』を設置していました。
(※もちろん、夫には了承をもらっています)

仕事の休憩中など、ふとした時にスマホを開いて、カメラに映る夫の姿を見る。

ソファに座っている。
テレビを見ている。
猫と穏やかに過ごしている。

その『普通に動いている姿』を見るだけで、心から安心できました。

「大丈夫そうやな」

そんなふうにホッと息をつける時間が、
私にとっては、何よりも大切で、すがるような時間でした。

でも。
そのささやかな安心は、長くは続きませんでした。

前回の6回目の発作から、9か月——。

夫は、
ついに『7回目』のてんかん発作を起こします。

なんとか保っていた私たちの日常が、
また突然、音を立てて崩れ落ちることになるのです。

次回は、
**【想像を超えた最悪の事態。7回目の発作と、壊れていく日常】**
について書こうと思います。

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