
退院してから2週間。
リハビリは、週2回変わらず続いていました。
この日も、リハビリの前に外来の診察がありました。
CT検査と血液検査。
結果として、てんかんを抑える薬が、夜だけ1錠増えることになりました。
夫は、私が思っている以上に、ちゃんと色んなことを理解していました。
自分がどういう状況にあるのか。
できないことが増えていること。
それをはっきりと分かっているからこそ、苦しい。
『なんで、この人がこんなに苦しまなあかんの?』
隣で診察を受ける横顔を見ながら、私はそう思わずにはいられませんでした。
これ以上、苦しませたくない。
その気持ちだけが、ずっと心の中にありました。
この頃には、私もなんとか職場復帰を果たしていました。
でも、仕事をしていても、あの一時外泊での発作の光景が、突然頭にフラッシュバックします。
倒れた瞬間。
激しい痙攣。
頭からの大量の出血。
思い出すだけで、怖くて震えそうになることがありました。
ある日、家に帰ると、夫が一人でパソコンを触っていました。
画面を見ても、漢字はまだよく分からない様子でした。
それでも、
『自分で何かを打とうとしている』
その姿を見られたことが嬉しかった。
本当に**生きていてよかった**と、心から思いました。
リハビリのおかげか、以前より少しずつ漢字が出てくるようになり、
会話の言葉も、前よりスムーズに出てきています。
そしてある日。
「今日は、自分で帰るわ」
そう言って、病院から一人で電車に乗って帰ってきました。
その姿を見て、時間はかかっても、少しずつ前に進んでいるんだと実感しました。
ただ、家にいる時間が長くなり、タバコの本数は少し増えていきました。
発作の原因になる可能性もある。
後悔する前に、なんとかして止めないといけない。
私の中には、常にそんな焦りもありました。
散歩の途中、夫がふと言いました。
「……(地元の)川の名前が、出てこんかった」
それが、本人にとってはかなりショックだったようです。
車に乗っているときも、「ずっと看板の漢字を見ていると、しんどい」と。
だから、
「土日は少しリハビリを休んで、リフレッシュしたい」
そう話していました。
きっと、心にも頭にも、そのお休みの時間が必要だったのだと思います。
家でもできるように、ネットでリハビリのプリントを探して印刷もしました。
(※「縁の下の言語聴覚士」さん。いつもとてもお世話になっています)
夫は、かなり頑張っていたと思います。
やっぱり、やる時はやる人でした。
病気になって、障害を抱えて。一番つらいのは本人です。
それなのに、目の前でこんなに頑張っている。
だったら、私が弱気になってどうする。
もっと強くならないと。
『この人が助かったのには、きっと意味がある』
そう信じて、全力で支えていこうと強く思いました。
絶対に大丈夫。
そう何度も、自分に言い聞かせました。
次回は、
**【退院から3週間。小学生の漢字ドリルと、すれ違う感情】**
について書こうと思います。
