【第十五話】鳴りやまない暴言の電話。異物の正体

再入院から3日目の昼。
夫から電話がありました。

でも、電話口の声は、私の知っているいつもの夫ではありませんでした。

ろれつが回っておらず、
言っていることも、よく分かりません。

「帰るから。ここに居ても意味がない」
「俺が一番偉いから」
「酒、持って来てくれたら、すぐ返す」

何を言っているのか、まったく理解が追いつきませんでした。
そのあとも、何度も何度も電話がかかってきました。

頭では分かっていました。
これは夫の本心ではなく、病気(脳の圧迫)の影響だということ。
脳の中の異物がなくなれば、また必ず元の夫に戻るはずだと。
そう、必死に信じていました。

翌日。朝からまた電話が鳴りました。

「帰る。とにかく火、持って来て。一式」
(タバコのことだと思いました)

それからは、ひたすら暴言でした。
聞いているのが本当につらい。
でも、これは本人じゃない。病気のせい
そう自分に言い聞かせるしかありませんでした。

その日の昼に病院へ行き、先生と面談しました。

前日から圧迫していた包帯を外し、その日のCTを撮った結果。
脳内にあった異物が、少し外側へ移動していることが分かりました。
そのため、半分抜糸を行い、注射器でその異物を吸い出したとのことでした。

その正体は、血と分泌物が混ざったものでした。
(※これで4度目の手術は回避することができました)

今後は、痙攣を抑える点滴と内服薬で様子を見ること。
ただし、てんかん発作はしばらく起こる可能性が高いため、車の運転は絶対にできないこと。
さらに、タバコは発作を誘発するため絶対に禁止。
もしまた倒れれば、救急搬送になる可能性がある。

だからこそ、
「本来は、しっかり判断できる状態になってから退院させたい」と、説明されました。

ここから退院までの日々は、本当に苦しい時間でした。
何が起きているのか、本人にも、家族にも分からない。
ただ、別人のようになっていく夫を見つめながら、時間だけが過ぎていく。

その時の私は、やり場のない思いを、日記に書き残していました。

***

〈再入院から4日目〉
夕方、電話。「一式(タバコ)持って来い。それだけでいいから頼む」
暴言、また暴言。
「長袖持って来て」
きっと、病院を抜け出して外に出るつもり。

〈再入院から5日目〉夫、49歳の誕生日
朝から電話。「とにかく耐えられへん。今日休みやろ? 一式持って来て、一緒に外行ってくれたらいいだけや」
その後も、何度も電話がかかってくる。
「明日退院やから、朝から服持って来て」

病院に行き、看護師さんに(誕生日のお祝いにと)イチゴを渡してもらう。
点滴も自分で外そうとするらしい。ご飯も食べない。薬も拒否。
相変わらずの暴言。

このままでは、退院が遠のいてしまう。
ちゃんと治療を受けてほしい。ただ祈ることしかできない。

〈再入院から6日目〉
朝から電話。「抜糸した。帰れるやろ。お前から先生に言うてくれ」

お母さん(義母)と一緒に病院へ。先生からの説明。
脳内の分泌物は外に移動している。明日MRIで最終確認予定。
ただし、まだ、てんかん発作の可能性がある。
この状態で帰ってまた倒れたら、さらに危険になる。

***

次回は、
**「感情を爆発させる夫。告げられた障害」**
について書こうと思います。

上部へスクロール