【第十一話】退院から3ヶ月後の異変。頭蓋骨を外して過ごした8ヶ月間

退院してから、夫は少しずつ日常生活に戻っていきました。

体の回復は驚くほど順調で、
あんなに管に繋がれ、ICUにいた頃のことが嘘のように感じることもありました。

『ここまで来られて、本当によかった』

そんなふうにホッと胸を撫で下ろしながら、
私たち家族の生活も、少しずつ元のペースに戻っていきました。

なんと、くも膜下出血の手術からわずか2ヶ月で職場にも復帰。
『本当にあんな大病をしたの?』と、本人も周りも不思議に思うほどの奇跡的な回復ぶりでした。

しかし。
退院して3ヶ月ほど経った頃、思いもよらない出来事が起こります。

夫の頭の、手術をした傷跡のあたりに、プクッと腫れのようなものができてきたのです。

最初は、
『どこかにぶつけたのかな?』
『手術のあとだから、まだ少し腫れるのかな?』
その程度に思っていました。

ですが、念のため病院で診てもらおうと受診すると、
『皮下膿瘍(ひかのうよう)』と診断されました。

一度目の開頭手術をした部分に細菌感染が起き、
皮膚の下に膿(うみ)がたまってしまっている状態でした。

そして医師から告げられたのは、
「感染を抑えるために、もう一度『開頭手術』をする必要がある」という残酷な事実でした。

さらに、感染した骨を取り除くため、
「頭蓋骨を一度、取り外す必要がある」と説明されました。

せっかく痛みに耐え、乗り越えたと思っていた手術。
まさか、また頭を開くような手術を受けることになるなんて。

選択の余地はなく、その日のうちに緊急入院。
そして次の日には、2回目の手術が行われました。

時間は2時間半。
8時間かかった最初の手術に比べると、あっという間に終わったように感じました。

再手術のあと、
2回目も驚異の回復力。1週間で退院、その10日後には職場復帰もしました。

ただ、夫の頭は**頭蓋骨の一部が取り外された状態**になりました。
感染が完全に治まるまで、骨を戻すことはできないとのことでした。
その期間は、およそ8ヶ月。
思っていたよりも、ずっとずっと長い時間でした。

夫の頭を見ると、
頭蓋骨がない部分が、少しへこんでいるのが分かりました。
最初にそのへこみを見たときは、やはり恐怖で胸がざわついたのを覚えています。

そこからは、綱渡りのような日々が始まりました。
骨がない頭を、とにかく守らなければいけません。

転ばないように。
どこかに頭をぶつけないように。

それまで当たり前だった日常の動作一つ一つにも、
細心の注意を払いながら生活する必要がありました。

それでも、夫の体自体はとても元気でした。
普通に歩き、普通に会話もしていました。

だからこそ、
『早く骨を戻して、安心させてあげたい』
その思いばかりが強くなっていきました。

そして、長い8ヶ月が過ぎ。感染が完全に落ち着いたのを確認して、夫は『人工骨』を入れる手術を受けることになりました。

くも膜下出血発症の翌年、3度目の開頭手術へ。時間は2時間50分でした。
セラミックス製の人工骨が無事に入り、頭の形も元に戻った日。

『この手術が終われば、今度こそようやくすべてが落ち着く』
『これで本当に、元の日常に戻れるんだ』

その時の私は、心からそう信じて疑いませんでした。

ですが——。
この『3回目の入院中』に、私はある決定的な出来事に直面することになります。

それは、命が助かったというこれまでの安心感を揺るがすような、あまりにも大きくて、決定的な違和感でした。

次回は、**【3回目の手術。その入院中に起きた、決定的な違和感】**について書こうと思います。

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