【第十二話】3度目の手術と面会禁止の壁。病室からかかってきたパニックの電話

頭蓋骨を取り外してから、約8ヶ月。
ようやく感染も完全に落ち着き、
夫は頭に「人工骨」を入れる、3度目の開頭手術を受けることになりました。

季節は、2021年に変わっていました。

その頃には、新型コロナウイルスが世の中に広がり、
最初の入院の時とは、病院の状況も大きく変わっていました。

入院前には、本人もPCR検査を受け、陰性が確認できなければ手術はできません。
そして何より一番辛かったのは、**「家族は一切の面会ができない」**ということでした。
あの頃は、病院に行っても夫の顔を見られないのが当たり前の日々でした。

さらに、これまで2回の大手術を担当し、命を繋いでくれた主治医の先生は、遠くへ転勤されていました。
ずっと診てくれていた先生がいない。顔も見られない。
それだけでも、私の不安はとても大きかったのを覚えています。

手術前日にPCR検査を受け、陰性を確認してから無事に入院。
翌日、いよいよ手術の予定でしたが、他の緊急オペが入ったため、さらに2時間ほど待機することになりました。

手術を待つ時間は、何度経験しても、決して慣れることはありません。

ようやく手術室へ向かい、約2時間半後。
手術は無事に終了したと連絡がありました。

翌日にはドレーン(管)も抜いてもらい、順調に回復しているように思えました。

ただ、夫と電話で話した際、
「なんか、顔が腫れてきてる」と言っていました。
面会ができないため、リモートの画面越しに映った顔を見ると、たしかに少し腫れているように見えました。

それでも、手術から3日目にはシャワーも浴びられるようになり、「このまま、無事に退院できそう」
私はそんなふうに思って、ホッと胸を撫で下ろしていました。

でも——。
手術から4日目の朝。

突然、夫から電話がかかってきました。
電話口の声の様子が明らかにおかしく、叫ぶように言いました。

「ここがどこか、わからへん!」
「なんで俺、ここにおるん?!」

そして、

「……血だらけやねん」
「背中が痛い」

夫は、完全にパニックになっていました。
手術をしたことも覚えていませんでした。
私も一気に頭の中が真っ白になりました。

一体、病室で何が起きたのか分からない。姿も見れない。
私はとにかく、
「ナースコール押して! すぐ看護師さん呼んで!!」
と、震える声でそう伝えることしかできませんでした。

しばらくして、駆けつけてくれた看護師さんが出血の処置をしてくれました。
出血は術後の手術用ホッチキスで止めてある傷口からとのことでした。

その後、夫は少しずつ落ち着きを取り戻し、
自分が手術をしたことも思い出していきました。

ただ、夫は電話の向こうで「膝と腰が痛い」と、ずっと言っていました。

どうやら、病室で「何か」があったようでした。

翌朝。
CT検査を受けたあとの夫から、
「退院できるから、迎えに来てほしい」と連絡がありました。

あまりに急な話に驚き、私はすぐに主治医の先生に確認しました。
すると、「とりあえず一度『外泊』という形にして、家で様子を見てから、翌日に正式な退院手続きをしましょう」とのことでした。

色々とあったけれど、ひとまず家に帰ってこられる。
それだけでも安心したように思えました。

でも——。

それが、
とんでもないことの始まりだったのです。

次回は、
**「家に帰ってきた夫の異変」**
について書こうと思います。

(※ここから、私たちの日常はさらに大きく崩れていきます)

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