
頭痛はまだ治まりませんが、
夫の体は、私たちが思っていたよりもずっと順調に回復していきました。
本格的にリハビリが始まると、
少しずつ、できることも増えていきます。
ベッドから起き上がり、病院の廊下を歩く。
階段も、5階から1階まで自力で昇り降りする。
身の回りのことも、自分でできるようになりました。
そんな一つ一つの「普通のこと」が、
少し前までは、まったく想像すらできなかったことでした。
夫が一般病棟に移って、初めのころ。
病室のテレビでは、連日「ダイヤモンドプリンセス号」のニュースが放映されていました。
2020年の2月。
世間にとってはまだまだ「未知のウイルス」だった頃で、
病院にはまだ、普通に家族が面会に行くことができていました。
ある日。
私がどうしても仕事に行かなければならず、息子と娘に付き添いを頼んだ日がありました。
その頃の夫は、強い頭痛のせいでひどくイライラしていることが多く、私はとにかく夫の様子が気になって、正直、仕事どころではありませんでした。
仕事を終え、急いで病院へと駆けつけると——。
病室には、ベッドに座る夫と、その両脇に座る子どもたち。
3人で、普通にテレビを見ていました。
子どもたちに様子を聞くと、
「みんなで病院の売店に買いに行って、アイスを食べながらテレビを見ていた」と。
病室の入り口から見た、あの時の「3人の後ろ姿」は、今でもはっきりと覚えています。
普段と変わらない、家族の日常。
それがもうすぐ戻ってくるんだと、心の底からホッとして、とても嬉しかったんです。
(※ちなみに、本人は発症後から退院後まで、しばらくの記憶がまったくありません。だから当然、この時の3人の穏やかな時間のことも、彼の中には残っていません)
先生からも、
「体の回復は、とても順調ですね」と言われました。
『くも膜下出血』という病名を聞いたあの日、
最悪のことばかりを考えて震えていた私にとって、
それは本当に、本当にありがたい言葉でした。
夫の体は、確実に元気を取り戻しているように見えました。
そして、ついに。
待ち望んでいた「退院」の話が出るようになります。
この時の私は、
「やっと、やっとここまで来られた」
そんな安堵の気持ちでいっぱいでした。
このあと、
全く予想もしていなかった出来事が立て続けに起こるとは。
その時はまだ、思ってもいませんでした。
次回は、
**「病室での衝突。早すぎた一度目の退院」**
について書こうと思います。
